「セカンドライフ」はなぜつまらない 仮想世界のコミュニティーの本質

  • 2008.10.25 Saturday
  • 07:37
 インターネットの出現以来、数限りないコミュニティーがバーチャル空間に誕生してきたが、その本質とは何だろうか。ユーザーはコミュニティーに対してどんな魅力を感じてお金を払うのだろうか。過去この手の問題に迫る研究は大半が海外のものであったが、日本の研究者がこの謎に真っ向から挑んだ本格的な研究書が登場した。(新清士のゲームスクランブル)

 オンラインゲームや「セカンドライフ」などの仮想世界、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)といった不特定多数のユーザー向けサービスで成功する鍵は「コミュニティーを作ること」という話は、決まり文句のように散々言われてきた。しかし、多様なサービスが登場するなか、今やその決まり文句だけでは何も言っていないに等しい。

 そのコミュニティーの正体に迫ろうとしたのは、成蹊大学経済学部の野島美保准教授の「人はなぜ形のないものを買うのか〜仮想世界のビジネスモデル」(NTT出版)だ。自身もヘビーなオンラインゲームのプレーヤーである野島氏によるこの書籍では、オンラインゲームを中心にデータに基づく様々な研究が報告されており、今のインターネット上のコミュニティーの多様な性質を切り出すことに成功している。


■コミュニティーが満足度を下支え

 例えば、大規模オンラインRPGの「ウルティマオンライン」(エレクトロニックアーツ)のユーザーに対して2005年に行った顧客満足度の調査から、興味深い理論を導き出している。ユーザーコミュニティーは、満足度の低下を抑える効果を持っているが、満足度の最高レベルを引き上げるものではないというものだ。

 ユーザーは、ゲームに関わりはじめた当初はゲーム自体の新奇性を楽しむことに最高の満足度を感じるが、しばらくすると、価値を感じるポイントがゲーム内での人間関係や自分の居場所というコミュニティーが生み出す要素に変わっていくと分析している。

 これは、米ゲームデザイナーのウィル・ライト氏が「ザ・シムズ」(Maxis/EA)の成功について述べている知見と一致する。それは、ゲーム発売当初はゲームそのものの遊びの価値が中心だが、ある時間が経過するとユーザーのコミュニティーが生み出す価値がゲームの価値を超え始めるというものだ。

 ゲームは、リリース直後はゲーム自体のおもしろさによりユーザーを引きつけるが、いずれ飽きられる。しかし、飽きてもコミュニティーの仕掛けにより持続的におもしろさを感じるために、継続して遊ぶユーザーになってくれるというわけだ。これはこれまでも指摘されていたことだが、実証データで証明できた点に意味がある。

 コミュニティーは多様な機能を備えているが、その多機能の幅を示すことにも成功している。韓国製のゲームなどの調査を通じて、どのゲームにも共通する「コミュニティー活動の五角形モデル」というものを、野島氏は提案している。

 これは様々なデータから抽出した「会話」「指導」「他ゲーム情報」「他ゲーム勧誘」「オフ会」という5つの核となる変数からなる。この5つの変数の関係性がコミュニティーを性格づける大きな要素となり、これはどのゲームでも、国が違っていても共通しているという。


■3つのタイプのリーダー

 この調査で重要なのは、ゲーム内のオピニオンリーダーは役割によって大きく三種類に分けられるという視点だ。特定のゲームのなかで、他のユーザーを盛り上げるように力を注ぐ「コミュニティー内活性化リーダー」、ゲームのブログや情報サイトなどを運営したりすることで多くのユーザーに情報提供する役割を担う「ネット世論形成リーダー」、様々なゲームを遊びながら新しい発見を持ち込んでくる「ゲーム横断的活動派リーダー」だ。

 一般的なマーケティング理論では、そのゲームを遊んでいないユーザーを連れてくる口コミの役割を担う「ネット世論形成リーダー」が注目を受けることになる。しかし、新規に参加したユーザーをゲーム中にサポートして盛り上げる役割は、実際には違ったリーダーが担っている。すべての機能を果たすような一人の万能のリーダーがいるのではなく、複数のリーダーの活動がかみ合う分業が生まれることでコミュニティーが形成されると野島氏は考えている。


■機能を絞り込んだほうがよかったセカンドライフ

 3次元仮想世界のセカンドライフが直面した混乱についても、オンラインゲームのおもしろさの本質と対比する形で、鋭く分析している。

 野島氏は、人がオンラインゲームに夢中になる理由を「娯楽性やコミュニティーといった個別の価値だけが理由なのではなく、現実世界と比べて報われるスピードが速く、現実世界より見通しが立ちやすい世界であるために、強力に動機づけられることにある」と述べている。つまり、現実世界よりも複雑さを減少させている仮想世界は、何をすれば次の目標にたどり着けるのかという結果が明快であり、だからこそ魅力になるという理屈だ。

 ところが、創作から経済活動まで何でもできるという戦略をとったセカンドライフは、その自由度のあまりの広さによって活動から報われるまでのプロセスが複雑になり、ユーザーは活動をして適切に報いられたと感じる仕組みを維持することが難しくなっているはずだという。

 企業のビジネスとして参入するユーザーと、セカンドライフの環境を使って創作物を作ろうとするユーザーとの動機はまったく違うはずである。それらのユーザーが求める多様なコミュニティーへのニーズをまとめきれず、拡散させてしまった面は否めないだろう。

 野島氏は仮想世界全般について、「明快な因果律」を持って自分の活動の結果をすぐに見ることができたほうがユーザーのやる気を引き出せるだろうと考えている。セカンドライフのコミュニティーはもっと機能を絞った方が成功の維持につながったのかもしれない。


■現実世界とは別のニーズ

 仮想世界はゲーム的なルールを持つ一方で、人が関わる現実の延長線上でもある。ただ、それらのものが組み合わさると、現実の世界とは少し違ったニーズが生まれ、現実の世界とは違った性質を持つコミュニティーが形成される。

 野島氏は、仮想世界のユーザーには、その世界にアクセスする際にだけ生まれる独特の「バーチャル・アイデンティティ」があると考えている。それは現実の自分と違っているケースも多く、こうありたいという理想の自分をシミュレーションし、演じようという姿でもあるようだ。そうしたユーザーの心理は、他者を意識してコミュニティーに深く関わり、自らと他者を成長させようという動機へとつながっていく。

 今回紹介した書籍は、そうした仮想世界上の人間心理の普遍性にまで迫ろうとしている。ゲームに近いサービスだけでなく、インターネットサービス全般のユーザー心理に広げて理解できるため、今ネット上で起きている様々な事象を読み解く助けにもなる。
http://it.nikkei.co.jp/digital/news/index.aspx?n=MMITew000024102008
読んでみたいと思わせる感じ。面白そうです。
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