2カ月で10万人を集めた大人気ブラウザゲーム 非同期型MMORPGが新しい可能性を切り開く 「ドラゴンクルセイド」

  • 2009.07.17 Friday
  • 08:49
ジャンル:MMORPG
運営元:ベクター
開発元:Sun Ground Interactive Entertainment
利用料金:無料(アイテム課金制)
正式サービス日:4月23日

 ブラウザゲームの近年における世界的なヒットの起点となったのはご存じドイツ生まれの「Travian」(トラビアン)である。以前、レビューでお伝えしたとおり、古代ヨーロッパモチーフのトラビアンでは担当民族で自分の村の特性が決まり、その村を発展させてから移民で村を増やしては、ほかの村々と戦いながら繁栄を目指す。全体としてはバトルロイヤル形式のMMORTSに仕上がっている。

 「トラビアン」の成功を受けて世界中で開発されたブラウザゲームは、実のところこうした大枠を踏襲したMMORTSが大半である。「『トラビアン』より初心者に優しくしよう、『トラビアン』よりできることを増やそう」などといった“トラビアン+α”に留まる発想で作られた作品が非常に多い。

 大局でそうした流れのなかに位置しつつも、ファンタジーモチーフのタクティカルRPGとして誕生し、日本で人気を集めているブラウザゲームが「ドラゴンクルセイド」だ。箱庭開発ゲームとしての下地を残しながら、プレイ要素を「英雄」の「冒険」に収斂させることで、ファンタジーRPGらしさを実現している。オープンβテスト開始以来約3カ月で、10万IDを突破する快進撃を記録する「ドラゴンクルセイド」独特の魅力を、同作品が浮かび上がらせたブラウザゲームの課題とともに見ていきたい。

■ ブラウザベースで実現した、自動進行型MMORPG

 ベクター株式会社が4月23日から正式サービスを提供しているブラウザゲーム「ドラゴンクルセイド」は、北京Sun Ground Interactive Entertainmentが手がけた自動進行型のMMOタクティカルRPGだ。プレーヤーは自身の村を開発、「英雄」を雇用して軍団を組織し、悪魔に支配されたアサン大陸の解放を目指して戦う。

 プレーヤーはエルフ/ヒューマン/アンデッドの3種族からプレイする種族を選ぶが、これらは陣営分けではなく、あくまで自身の軍団の性格を決めるための仕組みだ。例えばエルフを選んだプレーヤーが、雇用した英雄の下に配属できる戦闘ユニットは、ハイコストだが個々の戦闘力が高いケンタウロスやユニコーンといった神獣達である。それと逆にアンデッドが動員できるのは、お値段なりの戦力しか持たない代わりに大軍を組織するのが楽なスケルトンやらダークナイトといったモンスター達で、ヒューマンなら槍兵/グリフォン/司祭など、中庸な戦力に設定されている。ブラウザゲームゆえ、こうした戦闘ユニットについては公式サイトにイメージグラフィックスが用意されているくらいで、ビジュアル要素はどこまでも控えめではあるものの、魔法や飛び道具は戦闘判定できちんと別個に機能しており、戦術的工夫の余地は十分にある。

 どの種族を選ぶとしても序盤の展開はほぼ共通で、チュートリアルクエストをこなしつつ自分の街(城)を発展させていくのが第一の仕事だ。このゲームに登場する資源としては、木材/石材/食糧/水晶のほかに金貨が設定されていて、金貨は通常、マップからダイレクトには手に入らないのがミソだ。大まかに言って、木材/石材/食糧は資源産出施設や建物の建設に使い、水晶と金貨を使って戦闘ユニットを生産(召還)する。

 資源の再投資を繰り返して資源産出そのものを増やし、街にさまざまな建物を建てていくところは、一見すると“トラビアン・クローン”そのものに思える。だが、街の奪い合いや資源略奪戦争の位置づけを見てみると、ルールこそ用意されているものの、決してゲームの眼目にはなっていない。街の防衛力がかなり高く設定されているうえに、他プレーヤーから略取できる資源量は少なく、略奪稼業を黒字で回すことはかなり難しくなっている。

■ ゲームの目的は英雄を育てるというロールプレイ要素

 それでは何をするゲームなのかというと、RPGらしく英雄を育てるゲームなのである。プレーヤーは、自分の街に建てた「酒場」を訪れる英雄を雇用し、彼らに兵を率いさせて悪魔退治の遠征を行ない、大陸解放を目指すというのが、バックグラウンドストーリーに沿った恒常的なプレイ目標だ。実際、他プレーヤーの街を襲って物資や街そのものを奪うPvP的なプレイは、現在のところ付加的要素と考えて差し支えない。

 自分の街を発展させることは、英雄率いる軍団と、英雄自身の武装を強化するための資金稼ぎであるとともに、軍団の攻撃力/防御力に対するエンチャントになっている。これが、ファンタジー設定を生かした本作独自の工夫だ。「鍛冶屋」の技術力を上げることで兵士の攻撃力を強化できるといった、現実モチーフ作品でおなじみのテクノロジー要素だけでなく、このゲームでは例えば建物「魔法学院」をアップグレードすると、すべての戦闘ユニットの対魔法防御力が上がる。同様に「魔法の塔」は魔法攻撃力を向上させ、「要塞」は物理防御力に貢献する。ファンタジー設定ならではの説得力を生かすことで、ユニットの種類を気にすることなく軍団を強化できる親切設計を実現しているわけだ。

 あまり細かなことを気にせずプレイを進めれられるという意味では、そもそも資源産出施設の設定がその最たる例だ。このゲームでは、街の四隅にそれぞれ木材/石材/穀物/水晶の産出施設があらかじめ用意されていて、資源の産出を増やすにしても、資源の溜まり具合と今後の需要を見つつアップグレード順を考えるだけでよい。街の特性による資源産出バランスの偏りといった要素は存在しない。一応、各プレーヤーの街が配置されるマップ上には、占有可能な資源産出地形もあるのだが、産出量が少ないため最序盤を除いてほとんど意味を持たない。これはどちらかというと、プレーヤー間に対話と解決が可能な程度の小さなトラブルを惹起するための仕組みであるようだ。

 「トラビアン」と同様、資源産出はやがて街に建てる施設でブーストされていくものの、最初から資源分布に偏りがないため、これも大局としてはプレーヤーの計画通りに進む。なぜまだ食糧だけ2段階のブーストアップ手段が用意されているのか不思議に思えるくらいだ。総じてこのゲームは資源のやりくり、帳尻合わせで苦労しないように作られており、頭を悩ませるべきはむしろ用途のほうである。有り余る資源はやがて、金貨で支払うプレーヤー間での資源/アイテムトレードや、NPC商人への売却を通して金貨に換えられ、軍団戦力の充実に当てられていく。

 一般にブラウザゲームのグランドデザインでは、プレーヤーにどのくらいの頻度でのアクセスを求めるか、そのためのタイムキーパー役をどのゲーム内要素に担わせるかが焦点となる。プレーした実感に基づいて言うなら、このゲームにおける不変のタイムキーパーは、1日あたり10回という、遠征時の経験値倍増ボーナス(ダブルポイント)だ。一方ゲームとして、一定の時間内にプレーヤーができることの量を決めているのは金貨である。遠征(のための兵力)に必要なのが金貨なら、遠征で得られるのも金貨。ほかの資源と違ってマップから金が採掘できないことによって、ゲームのなかで遠征の果たす役割が、はっきりと上位に置かれているのである。

■ 英雄を冒険に出しては結果を確認するだけで進むプレイ

 英雄は、マップ上にある丘や湿地、森といったさまざまな土地や、大陸に跋扈する悪魔達の拠点「悪魔城」などを討伐することで、資源と金貨、経験値とアイテムを手に入れて成長していく。自動進行型ゲームであるため、英雄に対するプレーヤーの仕事は戦力を整えて送り出すことに尽きるが、例えばマップ上には「水車」や「風車」などという特殊地形があって、これは1日に1回リフレッシュされ、最初にそこに英雄を派遣できたプレーヤーに金貨や各種資源の余禄をもたらすというボーナスがある。だから、リフレッシュされているのを見つけたら大慌てで待機中の英雄を出発させるのだが、当然ほかのプレーヤーも同じことを考えているので、到着したら一番乗りじゃなくて何も得られずがっかりとか、金貨じゃなくて木材がもらえたとかいう、ちょっとしたアクセント、お楽しみ要素も用意されている。

 遠征の即物的な目標としてクエストがふんだんに用意されているのも、本作の重要なポイントだ。繰り返し受託できる「日常クエスト」と、ゲーム世界の展開にまつわる「メインクエスト」が用意されているあたりは普通のMMORPGと同じ発想で、これに褒賞のおいしい期間限定クエストが加わる。リアルタイム操作のRPGと異なり、クエストと言ってもどこで誰に会って式の手順を踏むわけではない。「野盗を討伐してくれ」、「悪魔側のエリートユニットを1人倒せ」といった課題を、ひとつ選んで“オン”にして、いつものように英雄を派遣しているうち、めぐり合わせで達成できて実入りが増える……といった具合である。

 このゲームでは、城から遠くに出撃するほど多くの敵が出現し、それに比例して討伐後の報酬も増える。RPGらしく割り切ったギミックといえよう。英雄が育ち軍団の兵力が充実していくにつれて、より遠くへ派遣して稼げるようになり、配下の英雄の人数が増えれば安定した“収益”が実現していく。その実現過程、達成感がまずは楽しいのだが、仮に変化のない作業の繰り返しになってしまうようなら、それはゲームとして好ましくない……。クエストは“狩り”のお目当てを増やして、プレイの方針と成果に変化をつける役割を担っているわけだ。

 遠征で得られる金貨の量はかなり運に左右される一方、アイテムの入手確率は比較的高い。また先述の水車/風車と同様に、自分が制圧しようと思った悪魔城がタッチの差で他プレーヤーに制圧されて英雄達がすごすご引き上げてくるといった、マルチプレイゲームらしいハプニングもある。冒険で予想以上の実入りがあったときの嬉しさや、英雄に装備させるセット装備品があと少しで揃うといったワクワク感など、このゲームはいわば、ちょっとしたお楽しみ要素、「得した」感をうまく演出している。進行ペースこそ独特なものの、ライト系MMORPGが押さえるべきところはきっちり押さえているのだ。

 そうしたお楽しみ要素のなかで重要なのが、冒険で手に入るアイテムである。データが命のブラウザゲームだけに、「ドラゴンクルセイド」には実にバリエーション豊富なアイテムが登場する。鎧や兜、アクセサリーはもちろん、宝石やお守り、変わったところでは財布や「豊作の角」などといった品まである。それぞれのアイテムには、英雄のステータスを上昇させる効果を持つレアバージョンも存在し、ゲーム内でトレードを行なう市場では、まったく違う価格で取引されている。

 また、防具に関しては兜/鎧/篭手/垂/靴の5点でセットアイテムになっており、セットで装備することにより、ステータスボーナスと大幅なヒットポイント上昇の効果を発揮する。どのくらい大幅かというと、初期状態の英雄(体力パラメータ1)のヒットポイントが200のところで、最低クラスのセット装備によるヒットポイント上昇が300。セット装備は普通に遠征を重ねていれば揃っていくし、足りないパーツだけトレードで入手してしまうことも可能。この設定ひとつとって見ても、このゲームの力点が、アイテムコレクションであることがよくわかる。そのほかにも、アイテムの精錬と合成、英雄の乗り物とペットなど、近年のMMORPGが備えるプレイ要素はひととおりカバーしている。

■ アクセス間隔とプレーヤー負荷の問題を焦点に、注目すべき作品

 このゲームは、「トラビアン」の模倣という意味の“普通のブラウザゲーム”ではなく、MMORPGそのものと言ってよい。プラットフォームの違いをひとまず置いて見れば、プレイの手間が圧倒的に少なく、ソロプレイ主体でも十分に楽しめるまったり系MMORPGとして、このゲームの魅力をうまく整理できるように思う。プレーヤー同士の“同期”した行動を前提とする普通のMMORPGと異なり、非同期で進められるがゆえの魅力を持つ、と言い換えることもできるだろう。

 だが、この作品がまさしくMMORPGであることで、必然的にいくつかの問題を抱え込んでいるのも確かだ。その最も大きな論点が、英雄による遠征の平均的な間隔だろう。今回丸1カ月ほど集中的にプレイしてみた限り、損害/収益比的に効率のよい遠征はだいたい片道1時間、往復2時間あたりの距離という印象だった。もちろん、さらにプレイしていけば、より遠方まで遠征しても稼げるようになるだろうが、2時間以下の間隔で断続的にアクセスするのが最適のペースである期間は、けっこう長いのだ。

 何が言いたいかというと、この2時間というサイクルは、大多数の社会人や学生などにとって、これは少々厳しめの要求ではないかと思われるということだ。なんにつけ人は、システムから導き出される最適な経路でプレイしたいと思うものであるから、頻繁なアクセスが得になるシステムには、それができない人を遠ざけてしまう危険もある。仮に、ブラウザゲームとして真に新しい顧客層、既存のMMORPGでは捉えられなかった層を狙うのであれば、そのプレー内容はせめて半日程度“寝かせ”ておける必要があるのではないだろうか? 例えば英雄の行動予定を半日あるいは1日分くらいまとめてプロットできるような仕様を、工夫するのがベターかもしれない。

 自分が確保できない最適なプレーの時間と機会を、不正な手段を使ってでも補おうとするところからは、RMT(リアルマネートレード)の余地も生じてしまうわけであり、現に本作の公式サイトでは6月26日に、RMTが規約違反に当たることがあらためてアナウンスされている。テクニックよりも計画性よりもプレイ時間を高く評価するというMMORPGの“発明”を、大枠で継承することは、おなじみの問題に再び直面することでもあるのだ。

■ 非同期のコミュニティと、ゲーム内資産のあり方が今後のポイントか

 そうした課題が浮かんでくるのも「ドラゴンクルセイド」というゲームのコンセプトが、既存のMMORPGともトラビアン型ブラウザゲームとも異なる、新しいものであることの証左だ。そんな本作では今後、ギルド単位で挑戦する「攻城戦」や、ストーリーと深く絡む「最終決戦」といったコンテンツの導入が予定されている。もともと城主であるプレーヤー達が、非同期の集団で挑む攻城戦的要素とはどんなものになるのか、はたまた「最終決戦」を経たサーバーが、ほかのブラウザゲームと同様循環に入って次クールが始まるのか否かなど、あまり類を見ないゲームコンセプトだけに、気になるポイントも多い。

 「定期的にリセットされる自動進行型ストラテジー」については、ブラウザゲームでもインストール型の通常ゲームでも先行例があるものの、アイテムのコレクションなどゲーム内「資産」に大きくプレイの軸足を据えるRPGに、クールやリセットといった概念をそのまま適用するのは、なかなか難しいようにも思える。仮にリセットがあるなら、前クールから次クールへ、プレーヤーデータのうち何がどの程度持ち越され、何が抹消されるのかといった判断こそが、デザインセンスの見せどころとなるだろう。

 ともあれ「ドラゴンクルセイド」は、既存のMMORPGプレーヤーのみならず「ライト系MMORPGを本格的にプレイするだけの時間が確保できない」という人にもプレイ可能であり、また「トラビアンはやったけど、次は血生臭くないのがいいなあ」と思っているストラテジー/既存ブラウザゲームプレーヤーにとっても、魅力的な作品だ。世に引き合いの多いファンタジーモチーフを扱いつつ、非同期型コミュニケーションを核とする新しいタイプのMMORPGとして、今後どう発展していくのか実に楽しみである。

□「ドラゴンクルセイド」のページ
http://game.watch.impress.co.jp/docs/review/20090716_302854.html
なかなか惹かれる作品です。
【関連記事】
300日かけてゆっくり進むドイツ製ブラウザーゲームの魅力
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